演劇集団キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド」に「風のように」を提供。
小田和正:
映画「緑の街」は劇団が出てくる話だったんだけど、知識が何もなかったし、それぞれがどこまで自立できているのか。つまり、どういう人たちが劇団に集まってるのか。とにかく生の声が聞きたくて。話しに来てくれたときは恐縮したな。真柴(あずき)が一緒だったよね。真柴って愛想悪いじゃない?(笑)とっつきにくい感じでさ。
加藤昌史:
いや、アイツも緊張してたんですよ。あの日、小田さんに会うドキドキ感はすごいものでしたよ。真柴も高校時代のオフコース・ファンから始まってますからね。
小田:
いやあ、入ってわかんないもんだよね。そしたら、想像以上に協力してくれることになって。一緒にやる以上は「やってよかったな」というものが残せなかったら最悪じゃない?でも俺も「一緒に絶対いいものを作ろう!」と言えるほど、映画というものに対して器量があったわけではなかったし。「一生懸命やる」としか言えなかったよね。
加藤:
そしたらすぐ次の公演に来てくれて。「不思議なクリスマスのつくりかた」。で、観終わった後、小田さんが「アイツ、暇?」って菅野(良一)をキャスティングしたいとおっしゃって。そしたら今度は、劇団のシーンがある、ダンスのシーンがある、ということで徐々にウチの劇団員を投入していって、終いには僕にも「シャレで出ない?」とお声がかかって。で、社内で会議を開いて「仕事に支障をきたすのはわかっているが、申し訳ないけど俺は出たい」と(笑)。
小田:
あのキャラメルの公演は、自分がイメージしてるものだったよね。完成度も高かったし。予想してたんだよ。アマチュアの領域を乗り越えてプロとしてやっている人たちのエネルギーというのかな。何かを生業としてやるような人たちの一線を乗り越えていくような感じ。それがそこにあった。芝居というものを生まれてこのかた観たことがなかったからさ。歌舞伎とかは観たことあるけどね。ああ、やっぱりこうなんだ、と。うれしかったし、面白かったよね。想像以上だったのは音楽の出し入れだな。映画にしてもテレビにしても(音楽効果って)地味だからね。結構ヤバイくらい極端に音楽は打ち出してるよね。潔いんだな。出すときは出す!って感じで。出そうと思ってもPAの関係であそこまで音が出なかったりもするからね。(音楽の世界でも)「今日は思い切っていこうぜ」って言ってても、どこか安全なうるさくない程度のところに収まっちゃうものだから。それを強調するのはセンスだからね。ダイナミズムって、プロがいちばん大げさにやって伝えるべきものだし、そこがまた(表現として)いちばんオイシイところだし。(その後も公演を観に)行くたびに思うよ、「またやってるな」って(笑)。そこはキャラメルの特徴だと思う。あれからもう10年か……。
加藤:
僕、学生時代から劇団の選曲をやってきてるんですけど、タブーに近いものがいくつかあるんですよ。ビートルズは使わないとか、映画のサントラは使わないとか。こだわりはいっぱいあるんですけど、小田さんの楽曲に関してはこだわりどころの話ではなく、芝居で使わせていただくということ自体が意識の上にないくらい別次元のことなんですよ。僕にとって大切なものすぎて、カラオケでも歌わないぐらい「ハートの中にあるもの」なんで。高校の頃はオフコースのコピーバンドやってましたけどね(笑)。今は「俺の声で歌ったら、小田さんの歌が汚れる」、とさえ思う。芝居で使わせていただく、なんてことは180パーセントありえないことだったんです。ところが今回「カレッジ・オブ・ザ・ウインド」の3度目の上演に当たり、ラストの曲を差し替えねば、と思ったんですよ。実は初演のとき、台本が間に合わなくて急いで選曲した曲で。そしたら、それがお客さんの評判が良くて再演のときには替えられなかった。でも僕は本当は替えたかった……それから7年。今度替えなかったら一生後悔する、と思っていろんな曲から探し始めたんです。ウィンド、ウィンド……風、風……。洋楽からも探していて、はっと思った。小田さんって「風」の曲、どのぐらいあるんだろう?って。
小田:
「風」、多いんだよな。
加藤:
タイトルだけじゃなくて歌詞に出てくるものも入れれば相当な数になりますよ。中でも『風のように』は、『カレッジ・オブ・ザ・ウインド』のエンディングを飾るのに相応しすぎる詞と曲なんです。むしろ、それがたまたま小田さんの曲だったって感じ。なので勇気を出してお願いしてみたんです。
小田:
でもいつだったか、「風のように」のことを話してくれたことがあるよね。
加藤:
『風のように』はNISSANエルグランドのCM曲で、(映画の主題歌)「緑の街」と同時期なんですよ。
小田:
あのあと(交通)事故やっちゃって入院してて。「俺、どうなるのかな」なんて思ってたら、(テレビで)あの曲がCMがかかっててさ。自分の曲で気になった(笑)。そういう曲だったな。俺の曲って結構そうだけど、これも「男がわかってくれる」曲だよね。
加藤:
小田さんの曲ってほとんどそうですよね。オフコースの頃から、なんで女の子がキャーキャー言うんだろう?って思ってましたよ。男の気持ちの歌じゃん、って。
小田:
でもさ、また「風」かよ、って自分でも思うから、なるべく「風」については書かないようにしてるんだけど(笑)、やっぱりあまりに重要なんだよね、「風」は。風が流れると、時の流れが見える。風を感じられないような人生だったり人間だったりじゃ、しょうがないなあって。「こういう風が吹いたことがあるな」って、大事なものを思い出させてくれるし。で、圧倒的に客観的なものじゃない?感情がなくてまっさらなものだからね。それを勝手に人間が意味付けして感じてるだけなんだけど。風は、時間のことも何も考えてないんだけど、摩訶不思識だよね……。とにかく風と時の流れは、俺の中で対になってる。でもさ、初演の曲が評判いいなら替えなきゃいいじゃん(笑)。
加藤:
いや、もう絶対これです。ぜひ観にいらしてください。
小田:
じゃあ、気づかれないように、こそっと観に行くよ。自分の曲聴いて泣いててもカッコ悪いからね(笑)。
加際:
泣かせますよ~。今回は小田さんを泣かせることが目標ですから(笑)。
KAZUMASA ODA TOUR 2008"今日も どこかで"