「大好きな君に」
何かにつけて「最後のオリジナル・アルバムか」とか「最後のツアーになるらしい」とか言われるようになった。とにかく自分の仕事に、「最後の」というなんだか重苦しい言葉が勝手につけられる。最年長なんとかもよく言われるなぁ。そうだ!「風のようにうたが流れていた」の時は、集大成ってことになってた。う~ん、どうもオレを終わりにしたがっているみたいだ。そうじゃないにしても、とにかく年を取ったんだってことを認めさせたいらしい。そんなことは百も承知だ。しかし、生涯現役を目指したスポーツ選手は、「引退か」みたいに書かれたら寂しいんだろうな。オレは寂しくなんかないよ。それに、やりたかったら止めないから、ハハハ。それにしても、いったいいつこんなに時が流れてしまったんだろう。21世紀を迎えるカウントダウン・ライブをやったのは、ついこの前じゃないか。「ラブ・ストーリーは突然に」だって、大学で仙台に行ったのだって、ギター弾いて初めてうたってみたのだってほんの少し前のことだった。
「自己ベスト」なんてとぼけたタイトルのアルバムがとってもよく売れた。あ、買っていただいた。不思議でならなかった。オレの音楽を聴きたいと思っている人がこの世の中にそんなにいるはずがないと考えていた。あれだけおおやけに、しかもずっと「女々しい」とか「暗い」とか言われてきたんだから。で、「いったい、どんな人たちが、どうして買ってくれたんだろう」スタッフたちに何度となく聞いた。「なんとなく聴いたことある曲がたくさん入ってるし」「なんたって、言葉にできない、が」「やっぱテレビに出たから」「TVスポットが効いたんじゃないですかね」あのバカバカしいヤツだ。なんだか、結局分からない。
で、そんな人たちが高い料金を払い、貴重な時間を割いて、コンサートに足を運んでくれる、きっと。オレはそんな人たちに何を見せればいいんだろう、と考えた。ま、若い連中はねじ伏せるにしても、オレより年上の、ずっと人生のことを知っている人だっているはずだ、彼らはオレの何を見たいんだろう。どうにも分からない。分からないことだらけだ。さらに考え続けた。で、「自分ができることを精一杯やろう。自分にないものはどうしたって出てこないからなぁ」という考えるまでもない結論を得て、極めて当たり前を懸命にやることに決めた。オレだってただ年取ってきたわけじゃあるまい。それでダメなら仕方ない。払い戻しはしないけど。
コンサートには数十年も前から、ずっときてくれている人たちがいる。きっといる。その人たちにとって、自分はもう、昔からの友人のような存在に違いない。「ずいぶん長いことやってきたよね、まだ頑張ってるんだね」と迎えてくれるはず。もしこころの中で思っていたとしても、「最後の」なんて決して口に出しては言わずにね。一方ボクは「みんな!」と呼びかけるけれども、残念ながら、実のところ誰のことも知らない。それでも、こころの中で叫ぶよ、「みんな、元気だった!?大好きな君たちに会いにきたよ!」ってね。しかし、オレは一度も使ってないんだ、最後なんて言葉は。オレがヤメるときは…フッとね。
2005/05/19小田和正
★コメントタイプ:ひとり語り
★アーティスト:artist-0001
売上枚数200万枚突破について。
レコードが売れたから「人生大成功!」っていうのは、あまりにも短絡的で「おまえアホか!」みたいなことを言われそうだけど、この枚数というのは…もう生きてきて大成功!みたいなことじゃないですかね。ボクがデビューして、宇多田ヒカルさんのようにいきなり800万売ったという事であればもちろんビジネスって事やみんなに注目されるっていうことでは大成功って言えるんだろうけれど、「人生」っていうことで考えれば、なかなかそういう判断はできないからね。もうほとんど人生が終わってきているこの歳になって、これだけの枚数が売れたってことは、ここまでやってきた事がみんなに支持してもらえたってことのようにも感じられるからね。
昔、オフコースをやっている時に「将来、何を望むか」っていうような、そういう質問を受けたことがあって、「自分たちが出してきたアルバムのジャケットとかを一枚一枚見て、あぁこんなことをやってきたんだなぁって思うときが来たら幸せだなぁ」って話した記憶があるんだけど、それくらい感しいことではないでしょうか。その時の枚数は、100万枚とかもいってなかったわけだから…。で、これは数字もついて来ちゃったんで…CDを手にとってくれた人たちが、音楽を通して自分のことを見てくれていることは何物にも代え難いことだし、「ああよかったなぁ」っていう幸せな気持ちになれましたね。それでもこの数字には驚きましたね。みんなに「5~60万で充分なんだよ。あんまり高望みしちゃいけない」って戒めてスタートしたわけだから…。ほんとにどうもありがとうございました。
Kazumasa Oda Tour 2005"大好きな君に"