★コメントタイプ:ひとり語り

★アーティスト:artist-0001

★対象:diary_02120

THE SAME MOON.

~1980年からロサンゼルスに住むエンジニアとのつき合いが始まった、ビルという大きな男で、見たところ、十歳くらいは年上ビルおじさんという感じだ。
しかしきいてみて、彼も同じ1947年生まれと分った。急に二人の距離が近づく。
「地球の反対側で、同じ頃生まれていたんだ」
「そうか、なにか不思議な気がするなぁ」
「会えてよかった」
「うん」
 と訳の分らない会話になった。
『地球の反対側』なんて、男と女だったらただじゃ済まなかったかも知れない、話してゆくうちに、二人ともはじめて買ったレコードが『ムーンリバー』だったことが分かり更に、
「『ビーバーちゃん』、見てたか?」
「うん見てた。『パパはなんでも知っている』はどうだ?」
「もちろん!長男バド、長女ベティ、末っ子キャッシーだろ、じゃ『三ばか大将』は?」
「見ないわけがないだろ」
そうかそうか、お前もそうやって大人になったのかと手を取り合った。
「でもさ、お前の国と戦争してたんだよな」
「うん」
「SAD STORYだな」
「うん、確かにSAD STORYだ」
 なんとなくしんみりしてしまったが、二人は突如誕生した同級生だった。
 アメリカへ行った時ゴルフ場で何度となく、
「Hi! 調子はどうだった?」
と声をかけられた。
「最悪だよ」
「次はきっといいさ」
「だといいけどね」
 こんな時こそ『嬉しいな』と思ってしまう。
日本でこんなことは、絶対に起こらない。人類皆兄弟、などと強引なことをいうつもりは毛頭ないけど、
芥川龍之介の『河童』ではないが、選べなかったにしろ少なくとも保らは同じ時代に生まれてきた。
歴史は語りかけるかも知れないが、会話も出来ないし、一緒に取うことたって出来ないし、もちろん肩も採んでくれやしない。
僕らの仲間は現実に同じ時間に生きているひとたちだ。
彼らは批判したり、争ったりする対象としてだけ存在しているのではないだろう。
かつて、モハメド・アリが全盛の頃、僕は彼と同じ時代に生きていることに感謝した。
「小田さんの作る歌が好きです」といわれる時、僕は同じ時代を生きているひとたちの気持ちを直に感じる。
同じ時間を生きているという奇跡を見つめ直せば、自分の世界はもっと広がるはず。僕は自分の時代を愛したいし、誇りも持ちたい。
この時代に生まれて良かった、と思いたい。
それはきっと、隣のひと、すれ違うひとたちにほほえみかけることから始まるのだろう、気味悪がられてもめげないで。
 いつだったかビルと別れる時、
「オレは反対側に帰るけど、いつも同じ月を見てるんだよ、だから月を見たら時々
『ODAもこの月をみてるんだな』って思いだせよ」
 といったら、
「SURE!」
 と答えて、それ以来二人はいつも、
「THE SAME MOON!」
といって別れる。これが男と女だったら……。
まあいいか、同じ時代に生きる愛すべきひとたち。
(”TIME CAN’T WAIT“ 朝日新開社刊より抜粋)

ちょっと寒いけどみんなでSAME MOON!!