松たか子「おやすみ」プロデュース
小田和正:
松の曲については…クリ約の共演のあとに降って沸いた話だよ。いきさつは忘れちゃったけど、松のアルバムの曲を、ということで。先方は皆き下ろして欲しかったみたいだけど、俺が時間無いのを知ってたし、頼みづらかったのか…カバーでお茶を濁そうということになって。(根本)要と松と俺と三人で、アカベラかなんかで。大瀧詠一さんの「夢で逢えたら」とか、ああいうのがいいのかなって…。でも、とてもいい曲だけど”ど真ん中過ぎないか?”とかってことで、今度は夢つながりで「夢で逢いましょう」はどうだろうかって…。それでキーを決めて、仮歌を録って…。でも、やりながら”これは絶対に煮詰まるだろうな”って思ったんだよ。意義を求める人間としては、”どうもこれじゃ意義にぶちあたらないな”と思ったんだな。あと、他は書き下ろしで、色々なアーティストに頼んでるって言うし…。となると俺は、“クリエイティヴの度合いがちょっと違う”みたいなことを考えるタチでもあるしさ。時間がないってことがネックで…。それでしょうがないから、”書けたら出すよ”くらいの感じで引き受けて…そしたら書けちゃった。
でも、出来たんだけど、”まだ先方には言うなよ”って言って(笑)。だって、結果カバーのほうが良かったら、それでいいんだから。でも、書き下ろしの曲を聞かせたら、先方も"いや、それじゃなくてやはりカバーで”とはなかなか言えないだろうしさ(笑)。
──完成した松さんの「おやすみ」って、特殊なバランスですよね。ビアノは入ってるけどただ普通にコード支えてる演奏じゃないわけで…。
小田:
ホントはビアノも入れないで、もっとアカペラっぽくても良かったんだよ。しかもダビングなしの、ダブル(同じ人が二度同じように歌って声の厚みをもたすこと)もなしで、三人だけの声にしようって。だから三声以上には当然ならない。しかも俺のことだから、追っかけコーラスもやりたい。となると、和音的に成立しない。誰か追っかけたらそこでコードもないわけだし…。まあ、ないことはないけど最低限の和音くらいは、ということで、それでピアノを入れて。さらにパッド(音の始まりと終わりを長くして、空間的な厚みや隙間を埋める役割を果たす意味で入れるシンセの和音)も本当は入れたくなかったけど、ちょっとくらい入ってても分らないだろうってことで加えてるけどさ。でもまあ、基本は三人で歌ってます、ということですよ。で、いかにも三人で歌っているミックスもあったんだけど、これだとせっかく松が囁くように歌ってる良さが出ないので、がさつな男の声を抑え目にしたミックスにしたんだよ(笑)。
──松さんが“クリスマスの約束”で「to U」を歌ったじゃないですか。あの方の新たな魅力が感じられて良かったなあって。
小田:
あー、あれは良かったよね。あの歌、スゲえ難しいからね。でも松は”難しい”とかってこと一切言わないで歌うからね。”ここの声の調子が…”とか、そういうのないから(笑)。
──前回の「ほんとの気持ち」の時は、小田さんの求めに応えることが出来なかった自分に悔し涙、みたいなこともあったとご本人も語ってますが、今回は笑顔のレコーディングだったのでしょうか。
小田:
終わったあと、メール貰って、“感動して涙が出そうになりましだ”って書いてあったけどね。だから今回はそっちの涙だったのかな。「ほんとの気持ち」の時も、俺は泣いてたなんて分らなかったからね。鼻ぐずぐずやってたから、風邪気味なのかなって思ってたくらいだからさ(笑)。
KAZUMASA ODA TOUR 2008"今日も どこかで"