2000.8.8 「ミュージック・クリエイター」取材河村隆一さんと対談
河村:小田さんの歌を聴いててひとつ気がついたことがあるんです。それは語尾にあまりビブラートをかけずに、短い拍でスッと抜くということ。シンプルだけど実は難しいテクニックじゃないかと。
小田:ビブラートはもともと好きじゃなかったね。たぶん、おふくろもそうだったんだよ。おふくろは歌のうまい人だったから、その子守歌の影響が強かったんだろうね。そこはかとないビブラートはいいと思うけど。
河村:自分で音楽をやり始める前はそんなふうな聴き方は当然してなくて、オフコースの小田さんの歌は白玉、ロングトーンというイメージが強かったんですよ。でも、実はスッとひいてて。またその引き際がゴリッとしてないから、余韻で伸びてる感じがするんだなってことがわかったんですよね。
小田:歌はね、ひとりになってからずいぶん変えたんだよ。オフコースのときはとにかくコーラスが好きで、ヴォーカルも楽曲の一部だととらえてた。歌というものを重要には考えてなかったんだね。カッコよくハモッたり、ワーッとシャウトしてればいいと。でも、ひとりになって、歌は伝えなきゃいけないんじゃないかと思うようになったんだよ。歌う以上、それは楽器の一部じゃなくて主役だろうと。もちろん楽曲ありきという部分は変わらないんだけどね。それから、音符の長さとか譜割りとかを、相当突き詰めて考えるようになったね。
河村:気持ちをどう伝えるかが重要になってきたんですね。
小田:といっても、泣きが入ったような歌は好きじゃないんで、まぁそこそこにっていうのはあるんだけど。
河村:オフコースのときはコーラスが好きで好きで?
小田:もう入れれば入れるだけうれしかった(笑)。今だったらシンセでやるところも、「ウー」だの「アー」だのいっぱい入れてたね。そうすると、メロディ自体も音楽の一部になっていくわけ。俺はコーラスはやるのも聴くのも好きだから、どれがメロディに聴こえようがかまやしないと思ってたんだよ。だからよくケンカになったね。それに加えてまた、コーラスの音量がデカいんだ(笑)。
河村:(コーラス)が主メロを喰ってもGO!ですか?
小田:そうそう(笑)。だから、たまたま誰かが歌ってるのを耳にして、「それメロディじゃないんだけどな」と思うことも多いよ。たとえば「さよなら」のサビの“♪さよならーア~”ってところで、みんな“♪ア~”までメロディだと思って歌ってるんだけど。
河村:実は“♪ア~”はコーラスだったんですね。ソロになって歌で気持ちを伝えたいと思う前は、音楽とはどんな関係だったんですか?
小田:何か伝えたいことがあるから音楽をやるというのがノーマルな順序なのかもしれないけど、俺はとにかく音楽そのものをやりたかったんだよね。重心はそこにしかなかった。若いときは伝えたいことも大してなかったしね。もちろんオフコースがバンドとなって盛り上がったときは、リスナーもそれを求めてくるから、それに何かを返そうという気持ちはあったけど。でも、年をとるにつれて、これは本気で伝えないといけないなと思うことが明確になってきたね。俺はなんでも奥手なんだよな(笑)。昔はまたお客さんも一律だったと思うけど、最近のお客さんは手強いし。俺より人生の達人じゃないかと思うくらいの老夫婦が見に来てたりするからね。一体何を求めてきてるんだろうって、そこにはすごく興味があるね。俺のどこがよくて来てるのか、「ちょっといいですか?」って尋ねてみたいよね。
K.ODA TOUR 2002 『Kira Kira』