★コメントタイプ:ひとり語り

★アーティスト:artist-0001

★対象:diary_01985

NHKドラマ「必要のない人」主題歌「君たちを忘れない」

約束


 ひとつ目の約束は、福岡、「海の中道」でのスターダスト・レビューとのジョイント・コンサートだった。メンバー同志の顔合わせを兼ねた打ち合わせは、怪我をするだいぶん前に中華レストランで行い、いろいろな企画が出て大いに盛り上がったけれど、二度目の打ち合わせは根本要とスタッフだけ。一体オレはちゃんとライブを出来るのだろうか、この前の企画通りすべてをこなせるのだろうか、というところから始まった。こんな時の僕は絶対弱気にならない。単に負けず嫌いだから。全部ちゃんとやるから、と言った。しかし体が甚だ不自由なのは誰の目にも明かで、今の状態では思うようにリハーサルの時間は取れないだろうと言われると、さすがに大丈夫とは言い切れず、取りあえず出来るだけ負担にならないように準備を進めようということになった。とにかく元気な顔を見てもらえれば、と言う意見もあったし、確かにそういうこともあるだろうとは思ったけれど、やっぱりこういうイベントは企画あってのことだから、ただただお茶を濁すようなら止めた方がいいと心に決めてリハーサルに臨んだ。合同練習はお互いにある程度出来上がってからということで、久し振りにバンドのみんなと会った。皆、不思議そうな顔をして僕を見た。「大丈夫なんですか」と皆が聞いた。「おう、大丈夫だよ」と答えた。皆に会ってなんだか理由もなく安心した。もし大きな声を出して痛むようだったら、竹善に頼んでリード・ボーカルを手伝ってもらおうと思っていたけれど、咳をした時よりはずっと痛みが小さかったので、ひと安心。スタッフたちは、痛くないから大丈夫と言ってもじていない様子。楽器を弾くのはちょっとしんどかったけれど、リハビリ、リハビリと言い聞かせてこれもクリア。漸く自分でも「いけそうだな、これで」と確信。あとはジョイントのところをどう演出できるか、これはスタレビの連中も百戦錬磨だから問題ないだろう、さていちばん手強いのは、なんとしても涙は見せたくないということだった。歳のせいか、なんだかすぐにグッと来る。こんな時は特に危ない。素直になればと言われてもそういう訳にはゆかない。自分でそうなりたくないのだから。でもこれは、とにかく心して臨むしか方法はない。結局、合同練習の時間も、初の予定を上回って十分取れて万全の仕上がり、本番を待つだけとなった。

 「海の中道」は快晴で暑かったけれど、風が気持ち良くて、まるで、失くした夏を取り戻したようだった。「楽しくやろう、自分がいちばん楽しくなってやろう」と思った。予想していたより幾分暗くなってコンサートが始まった。スタレビの連中とステージのいちばん前まで歩いて行くと、思っていたよりずっと大きな声援が沸き起こった。嬉しかった。皆が喜んでくれて、とても嬉しかった。アカペラでスタレビの曲を歌い、続けて「yes yes yes」を歌った。いろんなことを思い出させる曲だから、一瞬グッと来たけれど、シャウトして無理矢理乗り切った…振りをした。僕らのステージの時、舞台の袖でスタレビのキーボードの光田くんが、僕のことを見て泣いていたと後から聞いた。いいヤツだ。この日はもうすべてが楽しかった。もしかしたら死んじゃったかも知れないのに、あんなに素敵な時が流れて行くことがとても不思議だった。野外独特のあの風が吹いている。僕は一体何者なのだろうと思った。アンコールのジョイント・ライブも思いっきり楽しくやれて、要が言っていたように、ほんとうに終わってしまうのがもったいないくらいだった。打ち上げも勿論盛り上がった。皆の顔が輝いて見えた。気のせいかも知れないけれど、今まででいちばん輝いて見えた。最後に要と僕にひと言づつということになり、グッと来そうなので嫌だと断ったけれど、やっぱり今日はそういう訳には行かないでしょうと言われ、確かにそうだなと、要に続いて、言いたいこと、ほんとうは山ほどあったけれど、泣かないことがいちばんのテーマだったので、短く挨拶した。「みんな、ありがとう、生きていてほんとうに良かった」。

 ふたつ目の約束はNHKのドラマの主題曲を書くこと。プロデューサーの浅野さんという女性の方と、横浜での二次上映の楽屋で打ち合わせをした時は、自分なりに勝算があって引き受けたけれど、「海の中道」でのライブの後、体は予想していたよりしんどくて、くじけそうになりながらもなんとか「君たちを忘れない」という曲にたどり着いた。ドラマの中でどんな風に聞こえるだろう。三つ目の約束は、慶応義塾大学の三田祭でのライブ。これは「アンコールthru the window」ということだから若い学生さんたちの前で楽しくやろう。そして次ぎの約束は、デスマッチ仲間との快気祝いゴルフ。そして皆と約束した久し振りのオリジナル・アルバムの制作の準備、それから自分との約束、第3作目の映画の脚本を書き始めて、それからその次は…。

SAME MOON!! Kazumasa Oda Tour 2000