TBS「クリスマスの約束2010」放送。
──2010年の「クリスマスの約束」の経緯を伺えますか?
根本要:
結局、前回(2009年)あれだけやっちゃったら今度はそれが憎らしくてしょうがなくなってくるんですよ(笑)。目の上のたんこぶというか(笑)。正直あれを超えることはかなり困難なことでしょ。同じようにやるとしても1回目というアドバンテージやインパクトはなくなる、結局は前回を超えられない…。そのへんが初期ミーティングのテーマでしたね。実はその段階で、小田さんは「やっぱり前回一緒に出てくれた仲間と、もう1回何かをやりたい」とおっしゃったんです。つまりもう1回同じ事をやってもいいんじゃないかと…僕ら的には少し安心したのですが…。だっていつでも前を超えるような新しいものを創ろうとする小田さんから、同じ仲間ともう1回やろうって言葉を聞けたんですから。ただメンバーのスケジュールや楽曲の選定もある。同じ形態でやるなら、前回を超えるさらなる超大作しかない。それには時間も必要だ。さてどうしようと打ち合わせが進んでいきました。
これはボクの個人的な分析だけど、「22'50”」という楽曲はすごくテレビ的で飽きないし、わかりやすいし、しかも音楽的にも今まで誰もやったことがない、常識を超える長さがあったことも事実。でも視聴者はそれを真剣に見ていたと思うんです。そんな真剣な視聴者がいるならば、多少テレビ的ではないけど、次は音楽を創ることの難しさとか楽しさとかを少しでも見せられたらいいなと思ったんです。そのへんから「僕らでバンドやろう」、小田さんも「10回目だから、あえて小さなライブハウスでやるのもいいな」という感じで話が進んでいって全貌が見えてきましたね。「クリ約」って、音楽にとっても愛情を持ってもらえる本当に良い番組だなという思いもあったし、前回のオンエア後もいろんな人から「面白かった」というメールや言葉をいただいて、それもただ観てたよじゃなくて、一緒にその場にいたような気分になったと葉加瀬太郎くんなんかも言ってたくらいだから…。そんなこともあったので今回は「音楽を創る」、つまり歌だけじゃなくてアレンジするとか演奏するとか、そういうところまで見せようってことになりました。…ただ、それは想像以上に難しいんです。収録途中で小田さんがおっしゃってたけど、たとえばオリジナルを創るんだったら、それがすべてで、比べるものがないからそれこそが100ですよね。ところが誰かの曲をやろうとなった時には、その原曲があるわけですよ。これとは違うアレンジでさらにこれにひけをとらないもの作るというのは、こんな面倒くさいことはないんです(笑)。「つまんないじゃん!」って言われたら終わりだし(笑)。だから目先を変えるために極端なアレンジを施すことが多いんです。でも小田さんはそれを良しとしない。やっぱり原曲の素晴らしさを踏襲したうえで、ここで出来る最良のものを考える…そこにすごく時間がかかりました。諦めなかったですね…そうやって段々見えて来て、その見えてきたものにも逐一チェックを入れるし、見えないものは何度でもトライする…しかも中途半端なものは全部やり直しますからね。本当に1曲たりとも諦めなかったですね。実は大橋は収録直前にノロウィルスにかかって最悪な状態だったんだけど、全曲のアレンジが完成してからぶっ倒れた(笑)。番組を観て歌を知る事は誰でもできる、たとえば誰々のあの曲良いよねみたいな。でもボクは、それにまつわる演奏やアレンジ、たとえば小田さんのアルバムは何故アレンジも含めて小田さん自身がやっているのか、そこにまで聴く耳もって聴き出すと音楽に対する愛情が変わると思うんですよ。まるでカラオケみたいに歌だけ聴いて終わっちゃうから、曲に愛情も無く使い捨てみたいになっちゃうけど、この曲を活かすためにこういう音を使って、間奏にはこういうものが入って、みたいなところまで聴いてもらえたら僕らとしても婚しいし、だから今回のクリ約で一番見せたかったところは、アレンジや演奏全部含めたこの1曲を「音楽」と呼ぶんだ、イントロからアウトロ、もちろん間奏も含めて、これがクリ約の中にある「音楽」なんだということです。
僕はバンドをやってるから一番感じるんだけど、皆それぞれやってきた癖があって、その癖とかが自然と一致していくのがバンドなんです。でもこの「クリ約バンド」は、気持ちはバンドなんだけどまだ組んで何週間しか経過してないから、やはり合わないところがいっぱいあるんですよ。ところが「クリ約バンド」のすごいところは、合わなきゃ合うまで必死で合わせる。誰かが翌日「あそこのパートはこうだよね」と昨日家で聴いた音源を洗うんですよ。本当にバンドだな~と思ってね。大抵は自分がうまくできていたらそこで終わっちゃうんですよ。でも「クリ約バンド」は違うんだよね。平気で他人のパートまで口出してくるし(笑)。僕は半分くらいの曲でギターを弾いたんだけど、ギターは大橋の方が大変だったと思います。でもあいつはいつも、それをちゃんとできるまでやってくるんだよね…ギターといえば、僕は普段アコギ(アコースティックギター)はあまり弾かないので、小田さんの言葉を拝借すると「ガサツ」なギターなんですけど(笑)、そこで何が違うのかと研究し始めて、最近ピックを変えたんです。僕はエレキでガシャガシャ鳴らす方なんだけど、「お前のギター、ガシャガシャし過ぎだよ。ちょっとピック見せてみる。これ固すぎないか?エレキはそれでもいいけどアコギはもう少し軽く弾いた方が良い音するから」と小田さんに言われ、それで実際に大橋のピックと交換してやってみたら「おっ、いいじゃん、これ」と…そして「これか!」と思って弾き始めたんです。そうするとエレキもこっちで良いかなと思い始めてね…もう少し丁寧なギターを心がけようと思ってます。
──今回は横浜の赤レンガホールという小さい会場でしたが、やり辛さみたいなものはなかったんですか?
根本:
あまり感じなかったですね。あの日もバンドだったから緊張するよりも、今日は何が起こるんだろう…というワクワク感の方が強かったです。実は今回の「クリ約」って、前回の「22’50”」に比べたら多少説明を必要とする企画だったと思うんです。だから逆に言えば、前回のように大きな会場でやってたら、うまく伝わらないところがあったかもしれない。でも小田さんは最初から小さいところでやろうと決めていたから、結果すべてうまく伝えられたような気がします。あの距離感だから、より濃く音楽を伝えられる、楽しめる…普段こんなに説明してから演奏することはないわけだからね。へえ~と思いながらもその音楽は絶対に、歌しか聴かないとか歌詞がジ~ンと来るからとか、だけじゃない空気感を感じてもらえたと僕は思うんです。もちろん「22'50”」は幕張という大きな会場だったからこそ、あの感動が作れたとは思うんですけどね。
──今回のクリ約で一番印象に残っていることは何ですか?
根本:
常田が言っていたんですけど「クリスマスの約束」の「約束」って一体何なんだろう?って…。あいつはいつも、そういうことに疑問を投げかけるやつなんだけど(笑)。でもまさにそれですよね。ら音楽をやってる人間があの日に音楽のプレゼントをしたいんですよ。でもそれを「クリスマスの贈りもの」って言ったら何にも面白くないわけで、僕らがお客さんとこうやってつながっているという暗黙の約束というか…そういうことを伝えようとしているんじゃないかと。常田のひと言で、自分なりにこの番組の存在意義とか、自分にとって大切なものとか、小田さんが進もうとしているとかが何となくわかってきたような気がするんです。それまでもかなり濃い部分で参加させてもらっててありがたかったんですけど、ただ漢然と、クリスマスにやる音楽番組にミュージシャンとして参加させてもらっていたけど、今回のそのひと言で全部の意味というか意思というか、そういうのが見えて来たような気がしましたね。ひとつ残念だったのは、常田がピアノのところで、みんなから少し離れてしまっていたんですけど、あいつをこっち側に寄せてたらもっと面白い話がいっぱいできたんじゃないかなと(笑)。
──「クリスマスの約束」は10回を数えました。要さんが思う、この番組の行く末、理想の形、というものは?
根本:
小田さんは数年前からこれはオレの番組じゃないとおっしゃってるんです。そう思ってる人間は一人もいないんだけどね。これは紛れもなく小田和正の「クリスマスの約束」であって、それによってさらに小田和正の活動が活性化されていると思うんですよ。いろんなアーティストとの交流や小田さん自身の進もうとしている道も見える。でも逆に言えばミュージシャンとして活性化している小田和正がいるから、この「クリスマスの約束」も成立しているような気もするし……。どっちにも良い影響を及ぼしているんだろうなと思うんですよ。もちろん僕は小田さんにずっとこういうことを続けていって欲しいけど、でも小田さん自身の創りたいこと、TV局の創りたいこと、みんなの望むことのバランスが崩れるときだってあるはず。小田さんだって「特別やりたいことはないけど、仕方なく創る」なんてことは絶対しない人でしょ。そんな時に、「じゃクリ約終わりにしよう」じゃなくて、小田さんが育てて来た世代。例えばそれがスキマなのか翔太くんなのかわからないけど、そういう次の世代にうまいこと橋渡しができたら、音楽番組のあるべき形として素晴らしいと思うんです。もちろん小田さんもゲストでね。そんなふうに残って行ってほしいなと思いますね。本年の「クリ約」が放送されて以来、あちこちの音楽番組の作り方が変わってきたような気がするんです。そういう影響力を持った上で進んで行く番組だけど、小田さんがやりたいと思うことが無くなってまでやる必要はないと思います。
とにかく、この番組はミュージシャンが本来持っている考え方で作っていくコラボレーションだからすごくいいなと思うんです。そういう意味でもこの番組がコラボレーション番組の原点となって受け継がれて行けばいいんじゃないかなと…まぁ小田さんはどうなっても名誉顧問だし(笑)。
とは言うものの、現状で小田さん以上の適任者はいないと思ってますから。小田さんは優れたソングライターでもあるんだそれぞれ歌い終わっても、演奏の最後の音が消えるまで皆さん拍手しなかったんですよね。あれは嬉しかったな。そういうことだと思うんです、音楽を大切に聴いてくれるというのは。そういうところが伝わっていれば音大成功なんじゃないのかな。
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──10年目の「クリスマスの約束」を終えて、今どんな心境ですか?
小田和正:
10年目とかそういうことよりも、今年の「クリスマスの約束」をようやく終えた、という気持ちでいっぱいだね。なんかもう必死だったからね。
──前回の『22'50”』は、本当に大きな反響があり、小田さんのところに打ち合わせに行っても、ずっとその話で終わっちゃってましたからね。それだけに、今日に至るまで本当に大変でしたが、その『22'50”』から、今年の「クリスマスの約束」を終えてみて、いかがですか?
小田:
お客さんの前で演奏してみて、ああこれが正しい選択だったなっていう、まあ、他にもやり方があったのかもしれないけれど、音楽の力を借じて一生懸命そこに向かっていった、そういう形だったと思うよね。
──『22'50”』で味わった強い衝撃みたいなものが、今日もいくつかそんなスイッチが入っていくような感覚を受けましたが、小田さんはどうでしたか?
小田:
それぞれのアーティストの中にあるドラマが1曲1曲にあったし、前回を経過してきたからこそ、そういうものが出たのかなって気がするね。一生懸命、丁寧に演奏して掘り下げていったからね。もちろん前のような1曲歌い終えてのハイタッチみたいなものはないけど、やっぱり一緒に戦ったというか、みんなで一緒に完成していくっていう、そういう財産みたいなものを沸々と素直に味わえたのが感しかったね。
──今回も長い時間をかけていろいろ議論を重ねてきましたが、次はどうする、そしてその次はどうするみたいな(笑)今日、終えてみて、何か見出したんじゃないかっていう期待もあるんですけど…。
小田:
いやあ、そんなにあまくないね。でも去年のは「企画」として、そして今年のは企画というより「音楽に正面から向きあっていった形だから、自分たちが信じるものを獲得できた」っていう、そういうのはあったね。去年のことは、ある時から封印してきたから、ようやく比較できるのかなっていう…。そういう意味では、やっぱり10年かけてたどり着いたものなんだなっていう気がするね。だからファッと、いろいろなアーティストたちの顔がうかんでくるね。
──いい番組ですよね。
小田:
いやあ、いい番組っていうか…。でもこの番組のセット入った瞬間に、みんなの気持ちというか、他の音楽番組に出たことないからわからないけど、イズムみたいなものをすごく感じるね。前はなんかあまり時間をかけたりして一生懸命やってると申し訳もないって思ったり…ちょっと制作費をかけすぎてるんじゃないか、みたいな、ことも気になったりしてたんだけど、…なんか今では、仲間意識っていうか、そういう気持ちを感じるよね。
──じゃ、来年も!
小田:
またゆっくり考えて…うん、精進できればね…。
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