シングル「ダイジョウブ(NHK連続テレビ小説「どんど晴れ」主題歌)/哀しいくらい」
ダイジョウブ
あの笑顔を見せて 僕の大好きな
時を止めてしまう 魔法みたいに
風が流れている 絶え間なく 遠く離れた人たちの
想いを 誰かに 伝えようとしてるんだ
その笑顔は どんな哀しみにも
決して 負けたりはしないから
君の 大切な人にも 風に乗って きっと 届いてる
自信なくさないで 少し 戻るだけ
君をなくさないで きっと ダイジョウブ
時は流れている 絶え間なく 出会ってきたことすべてを
思い出に 置き換えて 今を生きるために
明日へつながる あの 広い空へ
高く 高く 心 解き放つんだ
忘れないで 君の その笑顔は
いつだって みんなを 幸せにしている
人生は こうして 続いてゆくんだろう
間違っても 何度 つまずいても
でも 小さな その物語に
答えは ひとつじゃないんだ
その笑顔は どんな哀しみにも
決して 負けたりはしないから
君の 大切な人にも 風に乗って きっと 届いてる
明日へつながる あの 広い空へ
高く 高く 心 解き放つんだ
忘れないで 君の その笑顔は
いつだって みんなを 幸せにしている
小田和正:
”この曲の前にシングルで出してもいいかな…”っていうのも、幾つかあったんだけどね。WBS(ワールドビジネスサテライト)主題歌だった「明日」とかさ。でも、今回のNHKの主題歌は“シングルで出す”という約束で持ってきた仕事だったからね。となるとは、“必然性としてはどうなのかなぁ”とも思うわけじゃない?「明日」の時は、先方としては本当は出して欲しいけど、”でも、シングルにしなくてもいいです”ということで、それでやらせてもらったわけで。だから…今回の話は、未だに消化してない部分もあるんだけど、でもそう決まってからは、出来るだけ自分で納得できるようにしてったけどね。
だから”満を持しての何年ぶりのシングル”って感じでもないしな。そんなこと言っちゃいけないんだけどさ(笑)。ただ"これがシングルだったら、あれもそうしとけば良かったかな”という想いはあるわけで、でもその一方で、シングルにするってことは、“アルバムを聴いてくれない人でもたまたまラジオで掛かってるのを聴いてくれるかもしれない”ということだからね。売れなくても、それが足跡だし。まあ昔も散々やってきたしな。「生まれ来る子供たちのために」をシングルにした時もそうだったから…。そもそもオフコースってバンドは、シングルが売れるってバンドじゃなかったしさ。そう思えば、そういうものを出すことで、のちのちベスト・アルバム作るときに作り易くもなるし。今思うとマイナスはなかったと思うけどね。ファンの人は喜んでくれるだろうしさ。さらに今回のNHKのことで、“シングルって、もっと気楽に出してもいいものなのかなあ”という気にもなり始めているしね。
──シングルになるということが、「ダイジョウブ」の音楽性に、どんな影響を及ぼしたんでしょうかね。よりポップに、とか…。
小田:
NHK側にもコメントしたんだけど、朝ドラというイメージに寄りすぎたかな、というのはあったんだけどな。それと、ああいう場所で音楽的に難しいことやっても、ただ流れていっちゃうだけだろうから、言葉が届くようなオケにしようとしたな。ジジババが沢山見てるんだし(笑)、取っかかりはそのほうがいいかなと。あと、歌とかも、”♪はぁ~るの~うらぁらぁ~の“みたいな、誰にも解りやすいものっていうか…。それを優先したんだよ。あのドラマの始まり方の、タイトル・バックにアニメが出て、そこに対しての、みたいな…。事前に1話と2話を見せてもらったけど、”ちゃんと合ったものにはなったな”っていうのは思ったけど。
──朝、全国のお茶の間に流れることに関しては、何か意識したことありましたか?
小田:
朝から暗い声で、重い歌じゃねえな、というのはあったな。これから一日が始まるのにそれではさ…。
──学校や会社に行きたくなくなりますよね。
小田:
“あなた、どうして帰ってきちゃったの”ってね(笑)。だから、明るく歌わなくちゃいけないなっていうのはあったね。渡した後、“明るく歌いすぎたかな”って思ったくらいで。でも、スタジオでは何度も聴いて耳がキャピキャビになってるから、凄え明るく歌ったなって思っても、なかなか判断が難しいんだよな。ただCDで出す時に歌い直したんだけど、もっと自分寄りというか、少し、暗めにもなってるけどね。まぁ一般のひとたちに両方聴かせても、”どうちがうの?”っていう程度かもしれないけど。そのくらい声の明るさ暗さとかっていうのは難しくてさ…。まぁ演歌の人とかは、最初に一言の、その声のトーンにも賭けてるわけだろうけど。
──”♪おふくろさんよ~”みたいな?
小田:
それ、俺も丁度同じこと思ってたんだよ(笑)。
──主題歌ということで、ドラマの内容をどう意識したのか教えてください。
小田:
民放の主題歌とかだと、書いていてそんなに内容は気にならないんだけど、でも今回は"主人公はどれだけ逆境に対して辛いの?とか、途中、”涙をみせたりするのか”とか、そういうとこは気になったね。だってスゲエ気なのに”♪笑顔みせて…”とか歌っても、難なく逆境乗り越えて終始ニッコニッコしてるのに、“悲しみには負けないで”とか言っててもアホになっちゃうからさ(笑)
──「ダイジョウブ」というタイトルは、新鮮でしたね。
小田:
“あ、これ、いいかもしれない…”って浮かんだのがこれだったね。最初、一番だけ先方に聴いてもらった時は、こんな言葉は歌詞のなかには無くて。やがて二番も出来て、”入ってた方がいいかな”って考え始めて、で、上手く入った、という、そんないきさつで。文字については色々と書いてみたんだけどね、漢字とかも。ただ、自分で手紙書くときとか、”大丈夫”って漢字で書くとすっごい嫌な字なんだよ。下の方のこうやってこう伸ばすとか、みっつとも同じじゃない?凄くまとまり難いんだよ。まあ活字は活字なだけに上手いことまとまってるけど、見れば見るほど、そんなカッコいい字ズラじゃないんだよな。だから、漢字はやめよう、と。
歌う時も、あそこの”♪きっとダイジョウブ”って歌詞は、あまりにも優しすぎるのも嫌だったし、何回か歌いましたね。スタジオの副調室は無反応だったけど(笑)。”あ、その感じ、いいんじゃないですかね”とか言ってもらえたら、もっと歌いやすかったんだけど、何にもなかったからな(笑)。だから自分の想ったニュアンスで歌って、“あ、今、上手く歌えたな”って思って聞いてみたりしてさ。暗さとか、明るさの加減がね。でもそれ、最近、多いんだよ。歌った時の判断と、あとで聞いてみた時とで違ってるっていうのが。ほんとにやんなっちゃうね、老化現象じゃないのかな(笑)。でも、この歌はホント、あそこが難しいんだ。“ダイジョブダイジョブ!"じゃ軽いしさ。逆だと相手から“あんまり優しくしないで”って言われそうだし…その、ギリギリのとこがね。そもそも俺は親じゃねんだから、あんまり親身になり過ぎるのもさ。でも、歌はそんなところが出るもんなんだよな。不思議なものでね。前に小貫が“さよなら さよなら さよなら”の、”らー”の響きひとつで伝わり方が違うとか書いてたけど、歌ってホント、そうなんだよな。まあ、もしライブで歌ったら、また違うんだろうけどね。ライブで歌うと流れも出てくるし。場の空気と相まって…。
──これこれこうだからこそ、“♪きっとダイジョウブ”、みたいな、そこに自然と至るみたいなことにもなる、と?
小田:
そうそうそう。“クリ約”で歌った「東京の空」なんかもさ、ああいう番組を背負ってやってきて、その一番最後に会場の誰も知らない「東京の空」ってタイトルを発表して、そこで歌い始めたものだからこそのものになっていて、もしスタジオ録音であの曲を、「あ、ちょっともう一回!」とかやっても、そこで録れるものにも限界あると思うからね。ちょっと話が逸れるけど、昔はライブ盤て好きじゃなかったんだけど、ここ数年は、オリジナル・アルバムをライブ盤で出来たら素晴らしいだろうな、なんて思うよね。まあ多少のダビングはあとから許されるとしてもさ。ライブゆえに失うものもあるだろうけど、プラスされるものもあるよね。
──歌詞のなかに“自信なくさないで”ってあって、それに続けて“少し戻るだけ”って表現がありますよね。ここ、いいですよね。ダメなんじゃなくて、ちょっと戻って、またそこからやればいいじゃない、みたいな、そんな励ましにもなっていて…。
小田:
ああ、そう(笑)。あそこはさ、まぁ歌詞読めば分かるだろうけど、一瞬聴いて、すぐ分からない可能性もあるからね。ちゃんと伝わったのなら婚しいね。で、本当は”少し戻るだげ”じゃないんだよな。時間は過ぎていっちゃってるんだし(笑)。
──タイム・キャント・ウェイト。
小田:
そうだな。だから、ちょっと角度変えて、少し戻ってそこからやればいいじゃないってことだな。やれば、というか、やらざるを得ないんだしさ。留年みたいなもんで(笑)。
──歌の後半では“答えはひとつじゃない”とも言ってますし(笑)。
小田:
まあ、そう言ってもらえると気が楽になりますよ。そこ、ホント、ちょっと仮歌のときから引っ掛かってたところだから。NHKに渡したあと、“伝わらないかな、変えようかな”って思ってたところだから。
──聞き流す人もいるだろうし、たまたまそういう言葉を待っている人がいたら、より深く心に染み込むだろうし…。
小田:
だからその時もさ、さっき"ドラマの内容を意識したのか?”って訊ねられた時も言ったことだけど、”主人公、自信無くしてる場面あるのかなあ…”って考えながら書いてたんだけどさ(笑)。
──カップリングの「哀しいくらい」は“ルッキング・バックもの”ですが、オリジナルとは一変して、ピアノで始まりますね。バンドの音からより個人的なものに引き寄せて、ということなんでしょうか。出だしの感じとか、ピアノの弾き語りで歌っても良さそうな感じですけど。
小田:
いやいや、引き寄せてとか、そういうことじゃないんだよ。まず第一に、ルッキング・バックというのは“拙いな”というものをともかく"これだけはやっておきたい”ってことから始まって、でもそれはすでに終わってるわけでさ。もちろん、掘り返せばどんな曲でも気に入らないところはあるんだろうけど、敢えてやる必要はないな、とか、これはオフコースらしいし、バンドでやった形のままでいいな、とかってことなら、やらなくていいわけでね。で、「哀しいくらい」の場合、みんなが好きな曲ってことでは思いのほか上位にある曲だし、録り直すのはみんな抵抗あるかもしれないけど、“もうちょっと違う歌い方もあるな”というのは、重々分かってたのでね。だから面白いかな、というのがまずあって、で、アレンジだけど、これは何でもよかったんだ。ピアノじゃなく、ギター寄りでもね…。どうやろうと俺の気持ちとしては、今、伝えたい「哀しいくらい」の形になったなら良かったしね。で、当時の「哀しいくらい」はキー高かったなっていうか、もっとシットリさせたいなって思って少し下げた。まあ、声が出なくなったからキーを下げたと勘違いされると困るけど(笑)。あと、テンポも落として…。
──オリジナルは乾いた音でしたよね。
小田:
そうそう、乾いてたね。当時のビルのミックスのせいもあるけど。クールでカンカンカンリズム・ギターが鳴ってて、淡々としてる感じだったね。歌詞では”僕のまちがいは”と言いつつ、客観的だったな(笑)。
──哀しいくらい人を好きになるって、どういう感情なんですか?当時と今では、また小田さんの解釈が違うことなんでしょうか。
小田:
余計な解説してファンの人達の夢を壊すのもなんだからさ。でも、遊び半分で書いてたってこともないと思うんだな。”つまりはそういうことなんだろうな”って思ったから普いたんだろうし。でも、哀しいくらい好きっていうのは、女の子とか、どうなんだろうな。
──「悲しいほどお天気」というユーミンの作品もありましたけどね。
小田:
それも分るよね。でも、分る人と分からない人がいるんじゃないかな?空を見上げてみて、何を想う、ということではさ。”こんなに空が青いな”って人と、”それがどうしたの?”って人と…。絶対居るんだよ。”それがどうしたの?”って、それ以上は発展しない人って(笑)。でも俺なんかは空が青く感じられて、そういう時に"前世ってのはあったのかな?”って思ったりしてね。”この色を昔も見たのかもしれない…”とか想うとさ。”その感情はどっから来てるんだろうな”って思うもんな
KAZUMASA ODA TOUR 2008"今日も どこかで"