★コメントタイプ:ひとり語り

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★対象:diary_02449

Taipei International Convention Center公演


2年前この場所で、私は忘れられない夜を過ごしました。
今回台湾に来るにあたり、あの夜をどうしても越えたいと思ってやってきました。

今夜みんなのおかげで越えられました。

皆さんも私と同じ気持ちでしょうか?




★コメントタイプ:ひとり語り

★アーティスト:artist-0001

台湾公演


 台湾に行ってきた。今回は前回のようにアジア・ツアーではなく、台湾単独公演ということで、11月6日当日、公演に間に合うように会場入りした。空港を降りると、季節を錯覚したかのように、日本で言う真夏日。見れば現地の人達は半袖。しかしそんなもんは鞄に入ってない。腕まくりして対応した。会場は前回と同じ、「Taipei International Convention Center」内のホールである。演芸場のような施設じゃないから、入り口にもコンサート告知が派手にされているわけじゃない。「えっ、本当にここなの?」って思ったのも、2年前と同じた。そしてすぐ近くには、全長508メートル、世界一高い「TAIPEI 101」がそそり立っている。2年前に台湾でやった時は建設中だった。
 楽屋を訪ねる。会場のすぐ裏手にあり、それぞれに何か話し込んだり、最後の準備に追われたりしている。日本よりサイズの大きなチケットを受け取って、着席する。それにしてもここは、客席が急勾配で、満員になった時、ステーシからの景色はどんなものなのだろうか。そして、思えば2年前。小田はこの会場の通路を、駆け上がり、台湾のファンの人達と、より近くで触れ合おうとしたのだった。そして、予定よりすこし遅れて開演。基本的には、国内と同じメニュー、というか、今回のツアーの台湾公演であるから、それは皆然である。前回同様、途中のご当地も前日にロケ済とのこと。確か前回は、現地の人達と仲良く、温泉で足湯をする。小田の姿もVTRに映っていたが…。
 僕は中国語が分るわけじゃないので、あとから調べていただいたものを元にしてのレポートになることをお許しねがいたいのだが、小田が観客に語りかけた内容は、これが二度目の台湾公演であるということを意識したものだったようだ。冒頭の挨拶では「ただいま」と、そんなニュアンスを伝え、2年前にこの場所でやったコンサートが、自分にとって忘れられない想い出となったことも語りかけた。しかし、ここからが小田和正らしさ、なのだけど、小田は前回、台湾の観客達が自分を温かく迎えてくれたことに、甘えるためにやってきたのではない、ということだ。事実彼は、「あの夜をどうしても越えたいと思ってやってきた」と、そうハッキリと意思表示をしたのだ。そして、台湾の人なら誰でも知っている「望春風」(テレサ・テンの名唱もある)を披露したあたりで、台湾の人達も、今回の小田の意気込みというのが、前回をさらに上回るものだということを知ったのではないかと思う。そして…。「風のようにうたが流れていた」のコーナーを、台湾でも国内ツアー同様、やったのだった。もちろん、台湾で番組が放送されていたわけではないのだけれど、彼は番組の主旨を丁寧に伝えようとして、そしてそれは(自らの音楽体験を繙きながら、という、そんな番組のコンセプト)、音楽が好きな人達には万国共通の、理解しやすいものでもあったろう。「ハッピー・バースディ・スウィート・シックスティーン」などが歌われると、素直な手拍子のリアクションもあって、会場が華やいだ雰囲気となっていった。ご当地は、ゲリラ的に撮影するため、なかなか上手く行かなかったようだ。でも、何かが起これば、しかも、それが予定と違うものであっても、それが臨場感を生むのがご当地である。無許可では撮影禁止の場所も多く、残念そうな小田ではあったけど、エネルギッシュに名所を訪ね歩くその姿に、観客は興味津々の様子だった。
 前回より色々な部分でグレード・アップしたライブだった。前回を越えたい、という小田の意識は、自分自身が頑張ってパフォーマンスする、ということだけじゃなく、それ相応の備えをする、ということでもあったのだ。歌詞の字幕が多く準備されていたのも、台湾の人達には感しかったのではないかと思う。字幕っていうのは、もちろん外国では“翻訳”する意味あいがあるけど、国内でも、もっと字幕あってもいいんじゃないかなと思うことがある。特に新曲、とか。それ見ながらみんなで歌う、ということだけじゃなく、その歌を、言葉を噛みしめて受け止めたい、そんな内容の場合は、特に。後半、客席の中に入って行って、急勾配の階段を駆け上がるシーンは、前回も見られたことだが、2年前は果たせなかった、一番上の方の客席まで、今回は駆け上がっていった。僕はちょうど中程の席にいたのだけど、小田は軽く僕の場所を通り越して、上へ上へと登っていった。会場の人達は驚き、でもそれが大興奮へとつながり、場内は凄い熱狂に。ただ、みんなわきまえていて、人を押し退けて無理やり近づこう、という人はいなかった。そして小田は、前回果たせなかったこの急勾配の完全制覇に成功したのだった。
 アンコール。「君住む街へ」の中国語ヴァージョンでは、この数のサビの“きみーすむー”のところが“チェビェンワンジー”なのを、は知らず知らずの内に覚えていることが分った。それほど中国語がメロディにハマっているから覚えていたのだろう。でも、しばらくして、歌の途中、声を詰まらせ、小田は顔を手で覆い後ろを向いた。それを、台湾の人達はやんやの喝采で迎える。これはどういう反応なのか僕は分らないのだけど(日本なら、観客は同じように涙すると思う。でも、台湾の人達ははやし立てる。自分たちがこのライブにこれだけ感動しているということ、それが伝わった証拠がこの感涙で、だから嬉しい、ということなのか…)。僕の反応は日本式だ。客席にいて、天井を見上げた。ハンカチを持っていなかったので。でも台湾のコンサートで一番感動したのは、実はこの場面ではなかった。最後に小田がツアー・タイトル"大好きな君に”に触れようとした時だったと思うけど、それを会場の人達が一緒に叫んだのだ。それがごく自然な、日本からわざわざやってきたアーティストを労うとかそういうのでもなんでもない、ごくごく自然なリアクションだったことに、大いに感動したのだった。
 終演後、通訳を介して、現地スタッフを前に挨拶している小田がいた。本番中のMC同様、小田は「前回を越えたい」という想いだったことを告げた。そして、その後…。意外にも、「前半何曲か終わったところで、大丈夫だ、越えられると思った」と、そんな告白をしたのだ。小田がライブの前半で得た手応えとはなんだったのか。お客さんの反応がとってもピュアだから、自然にそれを感じ取ったということか。
 打ち上げは、前回同様火鍋であった。今回初めて小田と回ったベースの有賀啓雄は、お客さんの温かい反応に感動していた。客席を眺めるだけで目が潤んだ、と。出演者に少し遅れて、機材などのスタッフも全員揃い、ここからが本当に全員で打ち上げだ。でも今回、小田はコンサートの終わり際に、「また必ず会えるだろう」と、そう観客に告げた。もし三度目の台湾公演があるなら、もちろん小田はこう考えるに違いない。「二回目を必ず越えたい」。地元のプロモーターの方からは、台北以外でもやったらどうか、と、なんと「台湾ツアー」の案まで出ていたが、果たして…。

小貫信昭

KAZUMASA ODA TOUR 2008"今日も どこかで"